真・の・ブログ

日常的な事、ちょっと考えさせられるような事、まじめな事、不真面目な事、料理の事自転車の事等々等々、音楽の事以外の事を徒然と書き綴っていくつもりです。 が、どうなるかはわかりません。

山 2

僕はある山に登りたいと思った。そう高い山ではない。なだらかな、優しい山に思えた。
そう特別な山であるようにも思えなかった。だけど、なぜか僕はその山に登りたいと強く思った。

春のある日、その山に登った。気持ちのよい晴れ模様。軽快に登る。谷に流れる小さな沢沿いに歩みを進める。久しぶりの山歩きは僕の心を幸せにした。
だが突如天気が変わり、空は急激に真っ黒になり、大雨が降りだした。春雷。
小さだった沢はみるみる濁流となり、僕は身の危険を感じた。やむなく山を下る。

日を改めて再び登ることとするか。

夏のある日、その山に再び登ってみた。夏とはいえ比較的涼しい一日。
今回は尾根沿いに歩く。だが思ったより日差しは厳しく、僕を灼熱の地獄へと追い込んでいく。
汗がにじみ出る。もはや歩みを進めることは困難であった。気がつけば、僕は脱水症状を引き起こしていた。朦朧とした意識の中、何とか下山した。

僕はその山に対しての想いを捨てることはできなかった。いや、むしろ想いは募っていった。

秋のある日、その山にもう一度登ることを決意した。秋晴れの、しかし紅葉にはまだ随分と早い時期の登山。
慎重に歩みを進めていく。予報ではコースを外れていくはずの台風が、進路を変更してその山を直撃した。
ものすごい風に僕は吹き飛ばされそうになった。森の木は折れて僕の頭を危うくうち砕く勢いでのしかかってくる。飛んでくる小石はまるで弾丸のように僕を頬をかすめる。。
もはや歩みを進めることは不可能だ。僕はほうほうの体で山を下った。

その山に登ろうとするたびに僕はひどい目にあう。だけど、何故かその山に対する想いを捨てることが出来ずにいる。
人は誰でも、一つの山を登らなければならない。それが、生きるという事なのだろうと思う。


冬、その山に挑む決意を固めた。決死の覚悟で挑む。
吹雪の中、アイゼンを締め、ピッケルを突きながら慎重に進む。
何も見えない。直感だけで進む。一瞬視界が開ける。その瞬間に進むべき方向を定め、少しずつ進んでいく。
唐突に体を持っていかれた。雪崩だ。薄れゆく意識の中で僕は思った。これが死ぬという事か。
僕の人生はここまでだったんだな。

気がつくと僕は病院のベッドで横になっていた。
救出された事は奇跡に等しいらしい。

手足は凍傷で真っ黒になっている。足の骨も折れた。指を落とさなかった事が奇跡であると医師に言われた。
傷が癒えるまでには相当な時間がかかる。様々な物事を犠牲にし、救出に関わった色んな人々に多大な迷惑をかけた。

僕はもうその山を登るのはやめなければならない、そう決意した。
その山に登り、傷ついたことに後悔はない。その山に挑むためにするべき努力の全てを僕はしてきた。
真摯にその山に挑み続けた。だから悔いもない。

その山を登ることをやめてはたと気がついたことがある。
その山に登ることをやめることが、本当に登るべき山を登り始めるということだったのだ。

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